決して新しくはない小説を読んだ。
一気に、二冊同時に。
「冷静と情熱のあいだ」、RossoとBluだ。
男と女。それぞれの視点で描かれた一つの恋。
タイトルにある“冷静”と“情熱”とは、いったいどこにあるんだろう。
過去と現在なのか。それとも、男と女なのか。
あるいは、それぞれの個性の中に同時に存在するのか。
何かをみつけようとして読んだわけじゃあない。
小説とは、読んでいる過程の中だけに存在しえるイメージを愉しむものだから。
過去は残酷だ。どれをつまみ出しても、何ひとつ事実を変えることはできないから。
しかし、未来への希望の種子が、たった一つでもあれば、人は生きられる。
冷静と情熱は、理性と感情と言い換えることができるだろう。
日々、このあいだで揺れて生きるのが人間だけれど、どんどんと過去に追いやられる時間の中に、未来への希望の種子を埋め込んでいこう。